2025/12/05
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埼玉県さいたま市を拠点に全国の中小企業を支援するJinji Compass 社労士事務所です。
2020年にパートタイム・有期雇用労働法と労働者派遣法が施行されて5年が経ちましたが、
退職金や家族手当などの「正社員だけの手当」、パート・有期への教育訓練・評価制度、
正社員と非正規の待遇差に関する説明義務などは、いまだに多くの中小企業にとって課題となっています。
前回のコラムでは
– 同一労働同一賃金制度の基本(不合理な待遇差の禁止・説明義務・行政ADR)、
– 現行ガイドラインの考え方、
– 退職金・住宅手当・家族手当など“例示されていない待遇”に関する論点案、
– 中小企業が取るべき実務対応(処遇の棚卸しや規程の見直し)
を整理しました。
▶ 同一労働同一賃金ガイドライン見直し(2025年予定)と中小企業の対応ポイント
本記事では、令和7年11月21日に公開された「同一労働同一賃金ガイドライン見直し(案)」をもとに、
「見直し前と何が同じで、どこが明確化されたのか」を解説し、
中小企業が就業規則・賃金規程をどう見直すべきかをお伝えします。
▶ 出典: 厚生労働省 労働政策審議会 同一労働同一賃金部会(第27回)資料3「同一労働同一賃金ガイドライン見直し(案)」
見直し前から変わらない同一労働同一賃金の基本
ガイドライン見直し(案)で明確化・強化された5つのポイント
中小企業が今すぐ取り組むべき3つのステップ
同一労働同一賃金と就業規則・賃金規程見直しのポイント
ガイドライン見直しを自社のチャンスに変える考え方
Jinji Compass 社労士事務所による同一労働同一賃金対応サポート
現行ガイドラインの大原則は今後も変わりません。正社員と短時間・有期・派遣労働者の間に待遇差がある場合、
職務内容・配置変更の範囲・その他の事情といった客観的な実態に照らして不合理であってはならず、
給与・賞与・手当・福利厚生・教育訓練など一つひとつの待遇項目ごとに合理性を検討する必要があります。
賃金や手当の決定基準が正社員と非正規で異なる場合でも、
「将来の役割期待が違うから」といった主観的・抽象的な説明では不合理な差を正当化できません。
職務内容・責任・配置転換範囲など客観的かつ具体的な事実に基づく説明が必要です。
見直し(案)では、「退職金・住宅手当・家族手当・無事故手当・夏季冬季休暇」など、ガイドラインに例示されていない待遇でも、
不合理な差と認められる可能性がある場合は解消を求める旨が明記されました。
中小企業への影響:
特定の手当を正社員だけに支給している場合は、その目的や支給基準を整理し、職務内容との関係で説明できるようにする必要があります。
「正社員を確保・定着させるために手当を設けている」といった説明は単独では不十分で、
待遇差が合理的と認められるには実際の職務内容や責任・異動範囲等を根拠にする必要があると明記されました。
中小企業への影響:
総合職とパート・有期の仕事の違いや、転勤・異動範囲、教育投資の有無などを職務記述書や評価制度で「見える化」し、
それに基づいて処遇差を説明できるようにすることが求められます。
見直し(案)では、勤務地限定正社員や職務限定正社員、短時間正社員などの多様な正社員についても
均衡待遇の考え方を適用することが整理されています。
中小企業への影響:
複数の社員区分を設けている企業は、区分間の職務内容・責任や評価基準の連続性を確認し、
処遇設計全体の合理性を高める必要があります。
これまでは曖昧だった「その他の事情」について、労使で待遇体系を議論して共有することや、
短時間・有期・派遣労働者本人の意向を考慮することが重要だと整理されました。
中小企業への影響:
待遇差を決める際に労働者の意見を反映し、特に派遣労働者に対しては派遣元と連携して待遇差の理由を説明する仕組みを整えることが求められます。
不合理な待遇差を解消する目的は短時間・有期・派遣労働者の待遇改善であり、
正社員の待遇を引き下げて均一化する方法は適切ではないことが強調されています。
中小企業への影響:
格差是正は非正規側の待遇改善によって行うのが基本であり、
正社員の手当や賞与を一律に減らして調整するアプローチは避けるべきです。
まずは、正社員・多様な正社員・パート・有期・派遣など雇用区分ごとに、
基本給・賞与・各種手当・退職金・休暇・福利厚生・教育訓練・評価制度などの待遇を一覧表にして見える化します。
チェックのポイントは次のとおりです。
□ 正社員/多様な正社員/パート/有期/嘱託/派遣など、
雇用区分ごとに待遇一覧表を作成しているか
□ 基本給・賞与について、雇用区分ごとの取扱いを整理しているか
□ 家族手当・住宅手当・無事故手当など、各種手当の
「有無・支給基準・対象者」を一覧にしているか
□ 退職金・特別休暇・福利厚生・教育訓練・評価制度についても、
同様に雇用区分別に整理しているか
一覧表ができたら、次はその待遇差を「なぜそうしているのか」と説明できるかを確認します。
□ 各手当・制度の「目的・趣旨」を一言で説明できるか
□ 「誰を対象にしているのか」「なぜその区分だけなのか」を
職務内容・責任・異動範囲などと結びつけて説明できるか
□ 「正社員だから」「将来の役割期待が違うから」といった
抽象的な説明だけに頼っていないか
□ 説明が苦しい待遇を、見直し優先度の高い項目として
リストアップできているか
こうした観点で、各待遇について
職務内容・責任・配置範囲・雇用の安定性・教育訓練の有無などと結びつけて文章で説明できるかをチェックします。
この段階で説明が難しい項目は、そのまま「見直し候補」として優先的に検討すべき領域になります。
整理した内容を、
さらに、待遇差の説明を求められたときの流れや、説明に使う資料、説明記録の残し方といった説明義務への対応プロセスも整えておくと安心です。
規程改定や制度変更の際には全体説明会や部門別説明、個別相談を実施し、
「なぜ見直すのか・何がどう変わるのか」を丁寧に伝えましょう。
また、多様な正社員や正社員転換制度がある場合は、それぞれの区分と通常の正社員・パート・有期との
序列・評価・昇格ラインを整理し、処遇体系に一貫性があるかを確認します。

同一労働同一賃金への対応にあたっては、
非正規との格差是正を理由に、正社員の家族手当や無事故手当を廃止・縮小することは、原則として避けるべきとされています。
ガイドラインが目指しているのは、あくまで短時間・有期・派遣労働者の待遇改善であり、
正社員の待遇を引き下げて均一化するやり方は、その趣旨に反するためです。
実務上は、
・「格差是正のために正社員を下げる」のではなく、
・正社員の水準はできるだけ維持しつつ、短時間・有期・派遣側をどこまで底上げするか
という発想で検討することが重要です。
手当や休暇の廃止・縮小といった処遇全体の見直しは、
同一労働同一賃金とは別の論点(就業規則の不利益変更など)も絡みますので、
実施を検討する際は、個別に社労士などの専門家へ相談されることをおすすめします。
今回のガイドライン見直し(案)は、
中小企業に求められるのは、
当事務所では、
「退職金や手当の運用がこのままで大丈夫か確認してほしい」
「今回の見直し案を踏まえて就業規則や賃金規程を整えたい」
といったご相談があれば、埼玉県をはじめ東京・栃木など関東圏はもちろん、
Webを通じて全国からお問い合わせを承ります。ぜひお気軽にお問い合わせください。