2026/04/18
お知らせ
「従業員が10人未満だから、まだ就業規則は必要ない」——そう考えていませんか。
Jinji Compass社労士事務所では、就業規則の作成・改定を数多く手がけてきましたが、相談を受けるたびに感じるのは同じことです。
就業規則がないことで深刻なトラブルに巻き込まれ、「まさかこんなことになるとは」と後悔する経営者を、何度も目の当たりにしてきました。
法律上の作成義務は常時10人以上の事業場に生じますが、10人未満でもリスクはまったく同じです。
本記事では、実際に中小企業で起きたトラブルの事例と、今すぐできる具体的な対策をお伝えします。
就業規則がない会社でも、少人数のうちは大きな問題が表面化しないことがあります。口頭や慣行で運営でき、「うちは回っている」と感じやすいためです。
しかし就業規則とは、労使間でトラブルが起きたとき、会社の立場を守る最後の根拠です。これがなければ、会社の考えが正しくても、それを証明する手段がありません。
労働基準法第89条 により、常時10人以上の労働者を使用する事業場には就業規則の作成・届出義務があり、違反には30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。ただし法的義務がない10人未満の会社でも、トラブルのリスクはまったく同じです。

以下では、実際の裁判例や法令をもとに、就業規則がないことで起きる代表的なトラブルを6つ取り上げます。どれも「うちには関係ない」と思われがちですが、規模を問わず発生している問題です。
残業代トラブルは、就業規則がない会社で最も多く発生するトラブルのひとつです。所定労働時間・時間外労働の手続き・固定残業代の設計などが明文化されていないと、退職後に数十万〜数百万円規模の請求を受けるリスクがあります。
就業規則に残業許可制の定めがない会社では、従業員が自主的に残業しているように見えても、裁判所が「使用者の黙示の指示があった」と認定して残業代の支払いを命じるケースが多くあります。
残業代をめぐる判断の根拠として、最高裁平成12年3月9日判決(三菱重工長崎造船所事件)では、労働時間の概念について「使用者の指揮命令下に置かれている時間」と定義されており、指揮命令の有無が争点になります。
就業規則で残業命令・申請のルールを明文化しておくことが、会社側の主張を支える最低限の備えです。また、厚生労働省の「労働時間の適正な把握のための基準に関する指針」でも、使用者による労働時間管理の義務が明確に示されています。
「残業代を後から請求されないか不安」——そのお悩み、まずご相談ください。
裁判所は解雇に対して非常に厳格な基準を適用しており、「客観的合理的な理由」と「社会通念上の相当性」の両方が求められます。
就業規則がなければ、懲戒事由も手続きも書面で示せず、会社側の主張は根拠を欠いた状態になります。
解雇の有効性については、労働契約法第16条が「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定めています。
また、最高裁昭和54年7月20日判決(日本食塩製造事件)は、懲戒解雇には「就業規則所定の懲戒事由に該当し、かつ懲戒権の行使が客観的に合理的理由を欠かず社会通念上相当なものと認められる」ことが必要と示しています。
就業規則に懲戒事由が明記されていない場合、そもそもこの要件を満たす出発点に立てません。
「問題社員をどう対処すればよいか」——解雇前に一度ご相談ください。
就業規則に休職の要件・期間・復職の手続き・休職満了時の扱いが定められていないと、メンタル不調の従業員への対応方針が決まらず、問題が長引きます。
この問題は、近年あらゆる業種・規模の会社で急増しています。

「休職中の従業員への対応に困っている」——長引く前にご相談ください。
2019年4月施行の働き方改革関連法 により、年次有給休暇のうち年5日は全規模の企業が時季指定して取得させることが義務になっています。
就業規則に有給取得のルール・時季変更権の行使要件が定められていないと、繁忙期の対応一つとっても、会社として根拠ある対応ができません。
裁判例:弘前電報電話局事件(最高裁昭和62年7月10日)が示す時季変更権の限界
最高裁は本件で、時季変更権の行使は「事業の正常な運営を妨げる場合」に限られるとしたうえで、その判断は「当該労働者の所属する事業場を基準として客観的に」行われなければならないと判示しました。
時季変更権の行使要件については、最高裁昭和62年7月10日判決(弘前電報電話局事件)が「事業の正常な運営を妨げる場合」に限り認められると示しており、単なる人手不足や繁忙期というだけでは不十分とされています。
就業規則に具体的な行使要件を定めることで、会社としての判断基準を明確にできます。
また、労働基準法第39条第7項 の年5日取得義務に関しては、厚生労働省が違反企業に対して30万円以下の罰金を科すことを明示しており、全事業場で対応が必須です。
「繁忙期の有給申請をどう対応すればよいか」——就業規則で解決できます。
2022年4月 からパワーハラスメント防止措置が中小企業にも義務化されました。
就業規則にハラスメントの定義・禁止規定・相談窓口・調査手順・懲戒処分の規定がなければ、被害者への対応も加害者への処分も根拠を持てません。
厚生労働省のパワーハラスメント対策に関する指針では、事業主が講ずべき雇用管理上の措置として「職場におけるパワーハラスメントの内容・方針等の明確化と周知・啓発」を筆頭に挙げており、就業規則や服務規律等への方針明記が求められています。
ハラスメントをめぐる使用者責任については、最高裁平成15年2月20日判決(京都セクハラ(呉服店)事件)が、使用者が雇用管理上の配慮を怠った場合に不法行為責任を負うことを示しています。
また、労働施策総合推進法第30条の2(パワハラ防止法)は、事業主に対して職場におけるパワハラ防止のための雇用管理上の措置を義務付けており、就業規則への規定整備はその中核をなします。
厚生労働省のパワーハラスメント対策ページでは、具体的な措置内容として就業規則への方針明記が筆頭に挙げられています。
「ハラスメント対応の仕組みができていない」——今こそ整備を。
退職時の引き継ぎ義務・秘密保持・競業避止について就業規則に定めがない場合、顧客情報の持ち出しや引き継ぎ拒否が起きても会社として法的に対抗する根拠が弱くなります。
特に営業担当者・エンジニア・専門職など、知識や顧客を抱える従業員が退職する局面で問題が起きやすいです。
競業避止義務の有効性については、厚生労働省「確かめよう労働条件」サイトに掲載されているフォセコ事件(奈良地裁昭和45年)が示す通り、①守るべき企業の正当な利益があるか、②従業員の地位が競業避止を求める合理的理由があるか、③地域・期間・業種の制限が過大でないか、④代償措置があるか、の4点を総合的に判断するとされています(出典:厚生労働省「確かめよう労働条件」競業避止の裁判例)。
就業規則と入社時の誓約書の両方で根拠を固めておくことが、有事の際の対抗手段として不可欠です。
「退職後の情報漏洩・競合転職が不安」——規則と誓約書で備えましょう。
ここまでの6つのトラブルを整理すると、次のようになります。
| トラブルの種類 | 主なリスク | 就業規則で防げること |
|---|---|---|
| 残業代未払い請求 | 数十万〜数百万円の支払い | 残業命令・申請ルールの明記 |
| 解雇・雇止め紛争 | 解決金・裁判費用・業務停滞 | 懲戒事由・解雇手続きの明記 |
| 休職・復職問題 | 長期の賃金支払い・職場の混乱 | 休職期間・復職基準の明記 |
| 有給取得トラブル | 是正勧告・罰則・従業員の離反 | 有給ルール・時季変更権の規定 |
| ハラスメント問題 | 損害賠償・企業イメージ低下 | 禁止規定・相談窓口・懲戒規定 |
| 退職・競業避止 | 顧客流出・情報漏洩被害 | 退職手続き・秘密保持・競業避止 |
これらはすべて、就業規則を整備することで未然に防ぐか、少なくともリスクを大幅に軽減できるものです。
裏を返せば、就業規則は「守り」の書類ではなく、採用・定着・コンプライアンス・助成金活用まで、あらゆる経営活動の土台です。
法的な作成義務がないため、「作らなくても問題ない」と思われがちです。しかし実務では、トラブルが起きたとき、会社を守るルールが存在しない状態になります。
つまり就業規則は、「義務の問題」ではなく「リスク管理の問題」です。
当事務所へのご相談の中でも、「もっと早く整備しておけばよかった」という声は、10人未満の小さな会社からも非常に多く聞いてきました。

「インターネットでダウンロードしたひな形を届出した」という会社も、安心は禁物です。
ひな形の就業規則は標準的な内容しか含まれておらず、自社の実態・業種・雇用形態に合っていないことが多いためです。
こうした状態の就業規則は、平時には問題が見えにくくても、トラブル時に「形だけ存在する」という最悪の状態になります。
就業規則は作ることが目的ではなく、実際に機能することが目的です。
就業規則に具体的に何を盛り込むべきかについては、以下の記事で詳しく解説しています。
就業規則がないことで起きるトラブルを整理すると、次のようになります。
これらはいずれも、就業規則を整備し継続的にメンテナンスすることで、大部分を未然に防ぐことができます。
「困ってから作る」のでは遅い——当事務所へのご相談でも、この後悔を繰り返し耳にしてきました。
就業規則は「人数要件の問題」ではなく、会社を守り、従業員が安心して働ける環境をつくるための土台です。
費用・期間・整備の流れについては以下の記事で詳しく解説しています。
常時10人以上の労働者を使用する事業場が就業規則を作成・届出しない場合、労働基準法第89条違反として30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。ただし、罰則よりも深刻なのは、トラブルが起きたときに会社を守る根拠がなくなることです。10人未満の会社には作成義務はありませんが、リスクは同様に存在します。
解雇自体は就業規則がなくても法的には行えますが、正当性を主張する根拠が著しく弱くなります。裁判所は「客観的合理的な理由」と「社会通念上の相当性」の両方を求めるため、懲戒事由・手続きが就業規則に明記されていないと、会社側が不利な立場に置かれます。
法律上の作成義務は常時10人以上の事業場に生じますが、10人未満でも整備をお勧めします。残業代・解雇・ハラスメント・退職時のトラブルは人数に関係なく発生します。また、助成金申請・採用力強化・将来の組織拡大を見据えると、早めの整備には大きなメリットがあります。
届出上は問題ありませんが、実務上は自社の実態に合っていないことが多く、トラブル時に機能しないリスクがあります。変形労働時間制・パート規定・最新の法改正対応・ハラスメント規定など、ひな形には含まれない重要な規定が欠けているケースが非常に多いです。
社労士への依頼費用の相場は新規作成で15万〜30万円程度、期間は2〜3ヶ月程度が目安です。当事務所では150,000円〜(規模・内容に応じてお見積り)でご提供しています。
詳細はこちらの記事をご覧ください。
可能です。顧問社労士がいる場合でも、就業規則の内容や法改正への対応状況についてセカンドオピニオンとしてご相談いただくことは十分にあります。
「忙しそうで気軽に聞けない」というご相談も多く承っています。
Jinji Compass 社労士事務所では、就業規則の新規作成280件以上・改定360件以上の実績をもとに、貴社の実態に合ったオーダーメイドの就業規則をご提案します。
初回相談は無料です。「現状を見てほしい」だけでも、お気軽にご連絡ください。