2026/07/03

📌 この記事のポイント
以下に一つでも当てはまれば、対応の見直しが必要な可能性があります。
「うちは有給を取りたい人には取らせている」
「申請があれば基本的に認めているので問題ない」
こうした認識で有給休暇の管理をしている経営者・人事担当者は少なくありません。
しかし2019年4月の労働基準法改正以降、この認識では法律上の義務を果たしていないことになります。
改正後の制度では、年10日以上の年次有給休暇が付与されているすべての従業員に対して、会社が年間5日以上の取得を確実に管理する義務が課されています。従業員が自ら申請しなかった場合でも、会社が時季を指定して取得させなければなりません。
つまり、「待ちの姿勢」では違法になる可能性があるということです。
年10日以上の有給休暇が付与されているすべての従業員が対象です。
| 雇用形態 | 対象になる条件の目安 |
|---|---|
| 正社員・契約社員、週5日勤務、週30時間以上勤務 | 入社6ヶ月後から(通常10日付与) |
| パートタイム(週4日・週30時間未満) | 勤続3年半以上で10日付与 |
| パートタイム(週3日・週30時間未満) | 勤続5年半以上で10日付与 |
⚠️ 「パートだから関係ない」という認識は誤りです
長期勤続のパート・アルバイトは対象になります。ここが最も見落とされやすいポイントです。
「うちのパートは対象になるのか確認したい」という場合は、まずは無料相談でご確認ください。
取得義務の5日は、有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に取得させる必要があります。
⚠️ 時間単位有給はカウントできません
半日単位の有給は0.5日として算入できますが、時間単位の有給は5日のカウントに含められません。時間単位有給をどれだけ取得させても、日数義務は別途履行する必要があります。
以下の3つを組み合わせて運用することで、年度末の「未達リスク」を管理できます。
従業員の申請
自ら申請して取得した日数をカウント。ただしこれだけに頼ると年度末に未達になるリスクあり。定期確認が必要。
計画的付与
労使協定を締結した上で、会社が有給休暇の取得日をあらかじめ設定。会社休日ではなく、本来の所定労働日を対象にする点に注意。
会社による時季指定
5日未達が見込まれる場合、会社が時季を指定して取得させる義務がある。就業規則への明記が必要。
✅ 計画的付与のポイント:対象は「5日を超える部分」のみ
計画的付与の対象にできるのは、各労働者に付与された年次有給休暇のうち、本人が自由に取得できる5日を残した部分です。
たとえば10日付与されている従業員であれば、最大5日分を計画的付与の対象にできます。導入には就業規則への規定追加+労使協定の締結が必要です。
⚠️ 時季指定の注意点
時季指定を行う際は、あらかじめ従業員の意見を聴いた上で、できる限り希望に沿った日程を設定することが求められます。
30万円
対象従業員1人あたりの罰金上限(労働基準法第120条)
従業員10人で最大300万円のリスクになります
罰金だけではありません。
行政リスク:労働基準監督署の調査で発覚した場合、是正勧告・指導の対象となります。対応状況の報告や再発防止策の提出が必要となり、経営者・担当者の時間的・精神的な負担は相当なものになります。
申告リスク:近年、従業員が労働基準監督署に直接申告するケースが増えています。「問題になっていないから大丈夫」という状況が突然変わる可能性があります。
「うちは従業員が少ないから」「今まで問題になっていないから」は通用しません
労働基準法は従業員数に関わらず適用されます。
「誰に・何日前までに・どの方法で申請するか」を明記します。急病などで事前申請できなかった場合の事後申請の取り扱いを規定しておくことが実務上重要です。
⚠️ よくある問題
無断欠勤後に「有給に振り替えてほしい」と申し出てくる従業員がいます。有給休暇は事前申請が原則であり、無断欠勤後の事後申請を会社が認める義務はありません。ただし、就業規則に明記していないと現場の判断にぶれが生じます。
「取得日数が5日に達しないと見込まれる場合、会社は従業員の意見を聴いた上で取得時季を指定できる」旨を明記します。これが時季指定の法的根拠となります。
「労使協定に基づき、計画的付与を実施することがある」旨を就業規則に定めた上で、別途労使協定を締結します。労使協定の有効期限管理と更新も必ず行ってください。
2019年の法改正以降、年10日以上有給休暇が付与されている従業員については、有給休暇管理簿の作成・3年間保存が義務となっています。法令上、年次有給休暇管理簿には「基準日・取得した時季・取得日数」を記録する必要があります。実務上は、これに加えて付与日数・残日数も管理しておくと、5日取得義務の未達を防ぎやすくなります。
▶ 就業規則に盛り込むべき基本ルール5選|社労士がトラブル防止の視点から解説
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ミス① パート・アルバイトの管理が漏れる
症状:正社員の有給は管理しているが、パートの管理が不十分
対処:雇用形態に関わらず全従業員を一元管理する。付与条件に達したパート・アルバイトを定期的に確認する体制を整える。
ミス② 基準日がバラバラで管理が煩雑になる
症状:入社日ごとに基準日が異なり、年間を通じて管理作業が発生し続ける
対処:基準日を統一(例:毎年4月1日)する。入社6ヶ月未満の従業員を基準日に合わせて付与する際は、法定の付与日数を下回らないよう注意が必要。
ミス③ 年度末に「5日未達」が発覚する
症状:年度末になって未達の従業員が複数いることに気づき、残り期間で対処できない
対処:半期ごとに取得状況を確認し、未達見込みの従業員には早めに時季指定・計画的付与で対応する。
ミス④ 労使協定なしに計画的付与を実施している
症状:「毎年お盆は有給で取ってもらっている」が、労使協定を締結せずに実施している
対処:計画的付与には労使協定の締結が必須。締結せずに実施すると法的根拠がなく、問題となります。
ミス⑤ 「取りたくない」という従業員の申し出をそのまま受け入れる
症状:「有給は使わなくていい」と言う従業員がいるため、そのまま放置している
対処:取得義務は会社側の義務です。従業員が望まない場合でも、会社が時季指定して取得させる必要があります。「本人が望まなかった」は免責事由になりません。
従業員が「有給は取りたくない」と言っています。それでも取らせなければなりませんか?
10日以上付与されている場合は5日は取らせなければなりません。取得義務は会社側の義務であり、従業員が希望しない場合でも会社が時季指定して取得させる必要があります。「本人が望まなかった」は違反の免責事由になりません。
無断欠勤した日を後から有給扱いにしてほしいと言われました。認めなければなりませんか?
原則として認める必要はありません。有給休暇は事前申請が原則であり、無断欠勤日を遡って有給処理する義務は会社にはありません。この取り扱いを就業規則に明記しておくことで、現場の対応にぶれが生じにくくなります。
計画的付与でお盆休みを有給扱いにできますか?
もともと会社休日や夏季休暇として定められている日は、有給休暇の対象にはできません。年次有給休暇は、本来労働義務のある日に取得するものだからです。
ただし、お盆期間中でも本来は所定労働日である日については、労使協定を締結したうえで計画的付与日とすることができます。その場合も、本人が自由に取得できる5日を残す必要があります。
時間単位の有給休暇を取得させれば、5日取得義務を果たせますか?
いいえ、時間単位の有給休暇は5日のカウントに含められません。時間単位有給は時間外の補填には有効ですが、日数義務とは別に管理する必要があります。
有給休暇が余った場合、買い取ることはできますか?
原則として有給休暇の買い取りは禁止されています。ただし、法定日数を超えて付与した部分や、退職時の残日数については任意で買い取ることが可能です。「買い取るから取らなくていい」という運用は法令違反です。
就業規則の有給休暇の規定が古いかもしれません。どう対応すればよいですか?
まず現在の就業規則を確認し、申請手続き・時季指定・計画的付与・管理簿整備の規定が揃っているかを確認してください。不足している場合は補うことが必要です。内容によっては従業員代表の意見聴取・労働基準監督署への届出も必要となります。まずはお気軽にご相談ください。
有給休暇の管理体制を整えることは、コンプライアンス対応にとどまらず、従業員が休みを取りやすい職場環境の整備につながります。人手不足が続く今、採用競争力や人材定着の観点からも重要な経営課題です。
就業規則の有給休暇規定の見直しについて、お気軽にご相談ください
初回相談は無料です。最適なルールを一緒に作りましょう。